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6話 彼の嫉妬と、妹の優しさ

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-09-04 20:00:33

「あぁ、大丈夫だって……宿題は終わったのか?」

 何とかこの場を離れ、一人になりたい一心でそう問いかけると、ユアは屈託のない笑顔で答えた。

「ん? おわったー♪」

 そういうと、いつものようにユアは俺の隣に横になり、スマホをいじりだした。彼女の横顔は、妹ながらに本当に可愛いと思う。くりくりした大きな瞳、すっと通った鼻筋、そして、ぷっくりと柔らかそうな唇。これが、妹ではなく彼女だったら……どんなに幸せだろう。そんな叶わない思いが、胸の奥でチクリと痛んだ。

「だれかとやり取りしてるのか?」

 無意識に、少し探るような口調になっていたかもしれない。しかし、ユアは俺のそんな思惑を知る由もなく、スマホの画面を俺に見せるように向きを変える。

「ううん。ゲームしてるー! ほらぁ」

 彼女の画面には、可愛らしいキャラクターが跳ねるゲーム画面が映し出されていた。その無邪気な様子に安堵しつつも、俺はさらに踏み込んだ質問をしてみる。

「学校で好きな男子とか出来てたりするのか?」

 その言葉に、ユアの指がピタリと止まる。そして、少し視線をさまよわせながら、もごもごと口ごもった。

「えぇーいないよ……」

 声のトーンが、いつもよりほんの少しだけ高かった。いや、これは完全に動揺している。俺の言葉に、ユアの頬がうっすらとピンク色に染まっていくのが分かった。

 え? なに、その反応……。絶対にいるじゃん、好きなやつ。まー、中2だもんな。そういう年頃か。頭では分かっているのに、心がざわつく。

 そっか……俺のユアに彼氏が? 想像しただけで、胸の奥が熱くなるような、じりじりとした嫉妬の炎が湧き上がる。

 『お兄ちゃん、だぁーいすきっ』とか言って、俺の腕に抱きついてきてくれてたのにな……。そんな可愛らしい仕草が、もう他の男に向かうかもしれない。その考えが、頭から離れなかった。

 俺が少し落ち込んでいると、ユアは近いのにさらに顔を近づけてくる。まるで俺の心の曇りを覗き込むかのように、その大きな瞳が俺をじっと見つめていた。

「え? ……だいじょうぶ? 顔色悪いよ??」

 彼女の吐息が俺の肌にかかり、ふわりと甘い香りが漂う。俺は、その香りに理性を揺さぶられながらも、胸の奥で渦巻く感情を抑えきれず、ついきつく言い放ってしまった。

「別に、大丈夫だから」

 その言葉は、思っていたよりもずっと強く、冷たく響いた。ユアの表情が、一瞬で凍りつく。大きな瞳はみるみるうちに潤み、不安げに揺れ始めた。

「……ご、ごめん……おこってるぅ?」

 ユアは、まるで捨てられた子犬のように、か細い声でそう尋ねた。その声には、謝罪と同時に、俺に嫌われたくないという切実な思いがにじみ出ていた。そして、甘えるように、彼女のやわらかい頬が俺の頬にぴたっとくっつく。その小さな身体から伝わる熱と、震えるような感触に、俺は後悔で胸が締め付けられた。

 俺は、頬をくっつけてきたユアに、正直に自分の気持ちを打ち明けた。

「……お前に、好きな人が出来たっぽいから……ちょっと、妬いてただけだって……」

 俺の言葉に、ユアはそっと頬を離し、潤んだ瞳をさらに大きく見開いた。そして、恥ずかしそうに下を向き、小さな声で呟いた。

「ん……ただの、ともだちぃ……」

 へぇ……男友達ができたのか。まあ、そうだろうな。頭では分かっているけれど、胸のざわつきは収まらない。彼女の表情や声から伝わる、隠しきれない感情。それを目の当たりにすることが、こんなにも辛いとは。

「そっか……まあ、頑張ってくれ……」

 感情を抑えきれずに、俺はイライラしながら、ついユアに背を向けた。まるで、彼女の顔を見たくないかのように。その瞬間、背後からひっそりと小さな声が聞こえた。

「あ! わ、わわっ。機嫌なおしてよぅーお兄ーちゃん! ちゅぅ……」

 ふいに、やわらかな感触が俺の頬に触れた。ユアが俺の背中に顔を寄せ、その唇が俺の頬にキスをしていた。彼女の唇は、とてもやわらかくて、まるで綿菓子のように甘い香りがした。

 ん? は? おいおい……。今までベタベタとスキンシップはしていたけれど、キスやエロいことはしたことがなかった。だというのに、こんなにもあっさりと。まるで、これが当たり前であるかのように。なんだか、今日はエロイベントが多すぎる。学校だけでは飽き足らず、まさか妹までもが? 俺の心臓は、激しく脈打ち始めた。

 もともと、お互いに募る想いが強かった分、ユアのキスはあまりにも濃厚だった。頬に伝わる唇のぷにっとした感触に加えて、温かく、にゅるっとした舌の感触まで、生々しく伝わってくる。

 すでに、俺たちは兄妹としての一線を越えかかってるって! ユアさん!?

 俺は、混乱しながらも、どうにか言葉を絞り出した。

「ゆ、ユア?」

 ユアは、満足げに俺の頬から顔を離し、潤んだ瞳で上目遣いに見上げてきた。その顔は、ほんのり赤く染まっている。

「……んぅ? ……機嫌、なおったぁ……?」

 そのあどけない声に、俺は再び身体中が熱くなるのを感じた。

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